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内科10.貧血
● 貧血の定義
血中のHb濃度が低下することです。
成人女性で11g/dL以下
成人男性で13g/dL以下
小中学生で12g/dL以下
は貧血です。
俗に血が薄いといいます。
● 貧血の頻度
女性に多い病気です。
男性525万人中0.5%(約26,000人)
女性396万人中12.7%(約503,000人)
[日本赤十字社調べ]

鉄欠乏性貧血が7割以上です。
このため鉄欠乏性貧血に焦点をあてて解説します。

 赤血球は血流に乗って酸素を全身に運ぶ働きをしており、これが足りなくなると十分な酸素を運ぶには血流量自体を増やしたり、呼吸量を増やすことで代償しなくてはなりません。すなわち、労作時・運動時に動悸・息切れがみられます。しかし、疲れやすい、肩こり、頭痛、朝起きにくい、めまいがする、月経が無くなったなどという漠然とした訴えも多い。身体症状として爪がスプーン状に反り返る、抜け毛が多くなる、肌がカサカサになる、口内炎・口角炎になりやすくなるなどがあります。

 鉄欠乏性貧血は赤血球の主原料となる鉄が不足することで起こる貧血です。貧血全体の7割を占めており最も頻度の高い貧血ですが、治りやすい貧血でもあります。
 人間の体には全部で約4gほどの鉄が存在しますが、2/3は血液の中にあり、残りは肝臓や脾臓などに蓄えられています。また一部は皮膚や粘膜の組織内にあります。鉄量の多くを占める赤血球は寿命がくると脾臓で破壊されますが、その時ヘモグロビンに含まれている鉄のほとんどはリサイクルされます。また体外に汗や尿などで排泄される鉄量は1日わずか1mgにすぎません。このように鉄は体内で大切なミネラルであるので、通常の状態では体内の鉄量を減らさないような仕組みになっています。よって私たちが1日に必要とする鉄量は、体外への排泄分1mgにすぎないのです。ただし実際には摂取した鉄の10%しか吸収されないので、1日に必要な鉄摂取量は10mgとなります。  ただし、成長に伴う鉄需要の増加や、女性の生理や出血による鉄の損失増加といった状態では、鉄の収支バランスがくずれて鉄が不足し、その不足分を貯蔵鉄で補う事になります。この状態が続くと貯蔵鉄が枯渇し、鉄欠乏性貧血が起こるのです。
 以上の事から1日に摂取する鉄量の目安は、成人男性で10mg、成人女性では12mgです。女性が男性より2mg多いのは生理による鉄の損失を考慮に入れてのことです。同様に思春期女子は10〜12mg、妊娠前期は15mg、妊娠後期は20mgです。通常は食事から得られる鉄量と排泄する鉄量のバランスがとれています。このバランスをくずす原因として以下の事が考えられます。
■ 慢性的な出血
 慢性的な出血とは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸がんなどの消化管の疾患や子宮筋腫などにより継続的に少しずつ出血していることをいいます。少しずつの出血であるため気づかずに血液を失っている事になります。この慢性的な出血は鉄欠乏性貧血の原因として最も多いもので、鉄の損失に直結しています。生理も毎月の出血であるので、この慢性的な出血に当てはまります。生理では月当たり平均40mLの出血があり、鉄として20mgの損失になります。
 貧血であれば胃・大腸の検査、婦人科受診の必要性があります。特に生理のない閉経後の女性や成人男性が鉄欠乏性貧血になった場合は、何らかの病気によって出血が起こっている可能性が高いので胃・大腸の検査の必要性があります。
■ 食生活での鉄不足
 成人男性や閉経後の女性が1日に必要とする鉄の量は1mgです。ただし食事から鉄分を摂っても消化管からの鉄吸収率が10%なので、食事から10mgの鉄を摂らなければなりません。さらに成長期(14〜16歳)の男性や生理のある女性は12mg、妊婦さんは15〜20mgくらいの鉄が必要です。
 一般的には1000kcalあたりの食事に6mgの鉄分が含まれます。2000kcalでは12mgの鉄となりますが、生理による出血や妊娠中はどうしても不足がちになってしまいます。若い女性は極端なダイエットをして2000kcalも摂取していなかったり偏食により鉄分が少なかったりで鉄が不足しがちです。
■ 鉄がうまく吸収できない
 食事に含まれる鉄分は消化され十二指腸から吸収されます。健康な人の鉄吸収率は10%ほどですが、消化器の病気などで鉄の吸収がうまく行われない事があります。また胃を切除すると胃酸の分泌が行われないため、鉄が溶けにくくなり吸収率が悪くなります。

 貧血全般の検査としては赤血球数やヘモグロビン、ヘマトクリットを測定しますが、鉄欠乏性貧血を診断するには、ヘモグロビンのほか、トランスフェリン飽和率、血清フェリチンを調べます。これらを測定した上で下の表のような基準に照らし合わせ、鉄欠乏性貧血を診断します。
ヘモグロビン
・・・赤血球の赤色色素で鉄を主成分としており酸素と結合しやすく、赤血球の酸素運搬能を担っている。
赤血球数とヘマトクリット
により以下を計算する。
平均赤血球容積(MCV) : ヘマトクリット/赤血球数
・・・小球性・正球性・大球性を見分ける。
平均赤血球血色素量(MCH):平均赤血球血色素量(へいきんせっけっきゅうけっしきそりょう)は、赤血球一個辺りのヘモグロビンの量。
・・・ 低色素性貧血と正色素性貧血、を見分ける
※鉄欠乏性貧血は小球性・低色素性貧血になります。
トランスフェリン飽和率
・・・鉄はトランスフェリンというタンパク質と結合して血液中を運ばれるので、血液中のトランスフェリンがどのくらい鉄と結合しているか(飽和しているか)調べる事で血液中の鉄の状態を調べる事ができる。
血清フェリチン
・・・貯蔵鉄が減少すると血清フェリチンが減少するため、貯蔵鉄の状態を知る指標として用いられている。
網赤血球
・・・5〜10万になるようなら正常であり、貧血があるにも関わらずこれ以下なら造血能の障害を疑う。

■ まずは原因を取り除く
 鉄欠乏性貧血には慢性的な出血や偏った食事など何らかの原因があります。すぐに鉄剤などを使用するのでなく、まずは原因を調べる必要があります。若い女性では原因がはっきりしない場合もありますが、閉経後の女性や成人男性の場合は必ず何らかの原因があり、原因となる疾患を治療する事を優先します。
■ 鉄分を補給する
 鉄欠乏性貧血そのものに対する治療は鉄剤(注)を服用する事で直接鉄分を補給する事です。貧血が見られるまで鉄が減少した場合は、食事のみで鉄を補う事は難しく、毎日1〜2錠の鉄剤(鉄量で100〜200mg)を服用していきます。服用を開始すると2週間ほどでヘモグロビンが増え始め、1〜2ヶ月で正常になります。しかし貯蔵鉄量を回復するためにはさらに1〜2ヶ月服用する必要があります。血中フェリチンが正常になれば鉄剤を止めてかまいません。
 最近では飲みやすくて吸収効率の高い糖衣錠がほとんどで、胃に負担がかからないようにできています。しかし基本は金属の鉄ですので胃腸症状の強いかたもおられます。ただし一般に胃薬には鉄の吸収を妨げる作用があるので必ず医師の指示のもと胃薬が併用するようにしてください。
  鉄剤を飲むと、その翌日から便の色が黒くなります。これを見て「出血しているのではないか!?」と心配される方がいますが、これは鉄が腸内で変化するために起こるもので、心配はいりません。また人によっては下痢気味になったり便秘気味になったりすることもあります。いずれの場合も深刻な症状ではありませんが、服用量を減らしたり鉄剤の種類を替えたりする事もありますので、医師に相談してみる事をお勧めします。
 鉄剤が飲めない場合は鉄の静脈注射を行う事があります。過剰の鉄注射は有害ですので、必要以上の注射は避けなければなりません。実際に不足している量を計算して決められた量の注射をする必要があります。
  また通常ビタミンCも併せて処方されます。ビタミンCは鉄が腸管から吸収される際に、その還元力により鉄を吸収されやすい形に変えることができます。特に大豆やほうれん草、のりなどの吸収されにくい非ヘム鉄をヘム鉄に変えることで腸壁からの吸収を高めるからです。食物から摂取した鉄の吸収率は10%しかなく、ビタミンCの働きがなければ吸収率はさらに下がってしまいます。また赤血球が造られる過程で重要な働きをしている葉酸の働きをビタミンCが高める事もわかっています。つまりビタミンCは貧血予防と改善になくてはならないビタミンなのです。
(注)鉄剤とは精製した鉄粉を主原料にしたもので、塩化第一鉄やフマル酸第一鉄、クエン酸第一鉄ナトリウムなどの鉄化合物の鉄剤が一般的です。鉄剤には食事の中に含まれる鉄よりもはるかに大量の鉄を含んでおり、しかも吸収されやすいヘム鉄の状態なので、効率よく鉄を摂取する事ができます。

 鉄欠乏状態に陥るのを防ぐためには、まず規則正しくバランスのとれた食事を心掛ける事です。食事を抜いたりインスタント食品で簡単に済ませたりすると、1日10mgの鉄さえも摂る事ができません。鉄分を多く含む食物を摂るように心掛けましょう。また鉄分だけでなく血液の材料となるタンパク質(注1)や鉄分の吸収をよくするビタミンC、ビタミンB12、葉酸(注2)なども必要です。また最近では鉄を添加した食品やサプリメントも多く市販されているので、これらを利用する事も効果的です。
 これらの栄養をきちんと消化し効率よく吸収するためにも、急いで食事をしたりせずによく噛んで食べる事が大切です。そうすることで胃酸が十分に分泌され、鉄をはじめとする栄養が効率よく吸収されるのです。また鉄分を多く摂ると腸の働きが弱まり便秘がちになるので、便秘の予防のためにも水分や食物繊維なども摂るように心掛けて下さい。
 また生活が不規則にならないようにし、負担にならない程度の軽い運動や睡眠時間を十分にとることも大切です。
(注1)動物性タンパク質には、動物性食品に含まれるヘム鉄が有効に利用されるのを助け、植物性食品に含まれる非ヘム鉄が消化管内で溶解するのを助ける働きがあります。これをミートファクターといい、牛肉や鶏肉に含まれています。また母乳にもこの働きがあります。 ただし、卵や牛乳のタンパク質、チーズ、大豆など植物性食品のタンパク質にはミートファクターが含まれておらず、むしろ鉄の吸収を妨げる作用があります。
(注2)ビタミンB12と葉酸はともに赤血球のみならず血球すべてを造る際に欠かせない栄養素です。これは血球の核を造る際に関わっています。これらが不足すると血球が正しく造られず、悪性貧血を引き起こしてしまいます。
 ビタミンB12はレバーや肉、卵、牛乳に含まれており、これらの食品を普通に食べていれば特に足りなくなる事はありません。ただし手術で胃を切除した場合はビタミンB12の吸収が困難になるため、注射による摂取が必要になります。
 葉酸もビタミンB群のひとつで、レバーや貝類、ブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、パセリなどに多く含まれています。葉酸も体内でつくる事ができず、食物から摂取しなければなりません。葉酸は緑黄色野菜に多く含まれており、日本の食生活で欠乏する事はまれです。ただし食事を満足に摂らないアルコール中毒の人にはまれにみられます。また妊娠中は葉酸の需要が増大し、毎年のように出産を繰り返していると葉酸欠乏になりやすいといわれています。葉酸は水に溶けやすい物質なので、尿などで排泄されやすく体の中に蓄えておく事ができません。毎日できるだけ新鮮な状態の食品を欠かさず食べる事が大切です。

■ 形態による貧血の分類
赤血球の減少は、赤血球のサイズ・ヘモグロビン濃度という観点から分類される。
赤血球のサイズ
大球性 - 赤血球が通常よりも大きい。赤血球の分化に異常があることを示唆する
正球性 - 通常のサイズ
小球性 - 通常よりも小さい。赤血球を作るための材料が不足していることを示唆する
ヘモグロビン濃度
正色素性 - 通常の濃度で含まれている
低色素性 - ヘモグロビン量が少ない。ヘモグロビンの産生に障害のあることを示唆する
これらを組み合わせて、例えば「小球性低色素性貧血」などと表現する。これは、状態を表現しただけのもので原因まで含めた診断名ではない。
■ 原因による貧血の分類
貧血の原因は大別して赤血球産生の低下と、破壊・喪失の亢進のどちらかとなる(両方であってもよい)。
赤血球の喪失
慢性出血などで赤血球を慢性的に失い続けていると、材料の鉄を使い切るためもあり小球性低色素性の貧血、いわゆる鉄欠乏性貧血に陥る。

自己免疫=悪性貧血
自己免疫障害によって起こる貧血。巨赤芽球性貧血の一種。
病態: 自己免疫障害によって胃粘膜が障害される。すると胃粘膜から分泌される内因子が不足して、ビタミン類の吸収障害を起こし、ビタミンB12を含むビタミン等が不足し欠乏性貧血となる。胃酸分泌も低下するので鉄を酸化することが出来ず、鉄吸収もしにくくなる。
治療: ビタミンB12が経口で吸収できない場合(古典的悪性貧血)は注射で投与する。
予後: 良い
歴史: 大昔、原因・治療法が不明のため悪性貧血との病名がついた。

腎性貧血
造血を促すホルモンのエリスロポイエチンの産生が不十分になり、尿毒症もあって、腎不全では貧血が進行する。
鑑別:まずクレアチニンクリアランスの低下などの腎不全を認め、次に貧血では著明に上昇するエリスロポイエチンが正常もしくは減少している。フェリチンやビタミンB12葉酸は低下していない事が多いが、エリスロポイエチン投与後、造血の活性化に伴い不足が顕在化することもある。

二次性貧血
悪性腫瘍や慢性炎症等に続発する貧血。
感染症等で全身的な炎症の状態が長く続くと、全身が低栄養状態となって鉄を利用できなくなり、鉄欠乏性貧血と同様の状態になる。
検査
鉄動態検査
貯蔵鉄が利用できなくなってフェリチンが上昇する。
悪性腫瘍は出血によって貧血の原因になるほか、全身を低栄養にすることで慢性炎症と同様に貧血を来しうる。
鑑別
出血によるものとの鑑別は、血中のフェリチン濃度が低下しないという点による。

溶血
何らかの原因で赤血球が破壊されることを溶血といい、 赤血球が何らかの原因で破壊される疾患は症状として貧血を来す。赤血球が不足して起こる貧血を溶血性貧血という。
自己免疫性溶血性貧血 : 自己抗体によって溶血する
発作性夜間血色素尿症 : 造血幹細胞の異状によって溶血する
バンチ症候群 : 脾機能の亢進によって溶血する
鎌状赤血球症 : 血色素異常によって溶血する
遺伝性球状赤血球症 : 膜蛋白の異常によって溶血する
サラセミア : 血色素異常によって溶血する

造血異常
造血異常には、赤血球を十分産生できなくなったものと、異常な赤血球しか産生できなくなったため血中に供給できずすぐ破壊してしまうものとに分類される。後者は無効造血と呼ぶ。
再生不良性貧血(AA)
赤芽球勞(PRCA)
骨髄異形成症候群(MDS)

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