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HOME内視鏡> 04. ピロリ菌と除菌
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内視鏡04.ピロリ菌と除菌
A.ピロリ菌感染による病気

 ピロリ菌は、胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌です。胃には強い酸(胃酸)があるため、昔から細菌はいないと考えられていましたが、1983年にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルによって発見されました。その発見以来、さまざまな研究から、ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍などの胃の病気に深く関っていることが明らかにされてきました。
 ピロリ菌の本体の長さは4ミクロン(4/1000o)で、2,3回、ゆるやかに右巻きにねじれています。
一方の端には「べん毛」と呼ばれる細長い「しっぽ」(べん毛)が4〜8本ついていて、くるくるまわしながら活発に動きまわることができます。
 ピロリ菌は、ウレアーゼと呼ばれる酵素を産生しており、この酵素で胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで、局所的に胃酸を中和することによって胃へ定着(感染)しています。
子供の頃に感染し、一度感染すると多くの場合、除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。ピロリ菌に感染すると、炎症が続きますが、この時点では、症状のない人がほとんどです。
 しかし、ヘリコバクター・ピロリの感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌や MALTリンパ腫やびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などの発生に繋がることが報告されている他、特発性血小板減少性紫斑病、小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹などの胃外性疾患の原因となることが明らかとなっています。


■ ヘリコバクター・ピロリ感染による主な病気

慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)
 ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると炎症が起こります。感染が長く続くと、胃粘膜の感染部位は広がっていき、最終的には胃粘膜全体に広がり慢性胃炎となります。この慢性胃炎をヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と呼びます。
 ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎を引き起こし、その一部が胃がんに進行していきます。

萎縮性胃炎
 「慢性胃炎」が長期間続くと、胃の粘膜の胃液や胃酸などを分泌する組織が減少し、胃の粘膜がうすくやせてしまう「萎縮」が進み「萎縮性胃炎」という状態になります。「萎縮性胃炎」になると、胃液が十分に分泌されないため、食べ物が消化されにくく、食欲不振や、胃もたれの症状があらわれることがあります。

腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)
 萎縮がさらに進むと胃の粘膜は腸の粘膜のようになる「腸上皮化生」(ちょうじょうひかせい)という現象が起こることがあります。その仕組みはまだ明らかになっていませんが、腸上皮化生を起こした患者さんの一部には、胃がんになる人がいることが報告されています。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍
 胃潰瘍、十二指腸潰瘍の患者さんは、ピロリ菌に感染している方が多くいます。
 これまで、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍になると、薬で胃酸の分泌を抑える治療を行っていましたが、治療しても、再発の多い、やっかいな病気と考えられており、再発を防ぐため長期にお薬を服用せざるを得ない(維持療法の)患者さんが多くいました。
 しかし、除菌療法*でピロリ菌をやっつけると完全というわけではありませんが、慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の多くの患者さんで再発しにくくなることがわかってきました。
 ピロリ菌以外の潰瘍の原因として最も重要なのが、痛みどめとして処方されている非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)や、血栓症の予防として処方されている低用量アスピリンです。
 現在、「ピロリ菌感染」と、「非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の内服」は、潰瘍の二大成因といわれています。
 そのほか、飲酒や喫煙、あるいは過度のストレスが引き金となって胃、十二指腸をつかさどっている自律神経のバランスが崩れ、粘膜の血流の低下や胃酸が過剰に分泌されて、胃の粘膜防御機構を破壊し潰瘍になりやすくなると考えられています。
 ピロリ菌に感染していない(あるいは除菌した)からといって、決して潰瘍にはならない(あるいは再発しない)というわけではありません。

胃がん
 胃がんとピロリ菌は密接に関係しているといわれています。
 1994年にWHO(世界保健機関)は、ピロリ菌を「確実な発がん因子」と認定しました。これは、タバコやアスベストと同じ分類に入ります。
 ピロリ菌の感染が長期間にわたって持続すると、胃の粘膜がうすくやせてしまう「萎縮」が進行し、一部は腸上皮化生となり、胃がんを引き起こしやすい状態をつくりだします。
 また、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃炎などの患者さんを対象としたわが國の調査では、10年間で胃がんになった人の割合は、ピロリ菌に感染していない人では0%(280人中0人)、ピロリ菌に感染している人では2.9%(1246人中36人)であったと報告されています。
ピロリ菌感染 総数 10年間の癌発生 割合(%)
なし 280 0 0
あり 1246 36 2.9
(Uemura N. et al.: N Engl J Med. 2001 ; 345(11) : 784-9 より)

 ピロリ菌を除菌すると、新しい胃がんが発生する確率を減らすことができる可能性があります。早期胃がんの治療後にピロリ菌を除菌した患者さんは、除菌をしなかった患者さんと比べ、3年以内に新しい胃がんが発生した人が約3分の1だったと報告されています。
 WHO(世界保健機関)の国際がん研究機関は、ピロリ菌除菌に胃がん予防効果があることを認め、各国ごとにその戦略をたてるようすすめています。
(Fukase K. et al.: Lancet. 2008 ; 372(9636) : 392-7 より;武田薬品の患者さん向けパンフレットより)


■ ヘリコバクター・ピロリの感染によるその他の病気

胃MALTリンパ腫(いまるとリンパしゅ)
 胃の粘膜にあるリンパ組織に発生する、ゆっくりと発育する腫瘍です。
 除菌による効果が証明されています。

特発性血小板減少性紫斑病(とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)
 血小板が減少し、出血しやすくなる病気です。原則として18歳以上の患者さんが除菌療法の対象となります。
 除菌による効果が証明されています。

早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃(ないしきょうてきちりょうごい)
 早期胃がんを内視鏡で治療した後の胃。その胃からは新しい胃がんが発生する可能性があります。
 除菌によって新しい胃がんの発生確率を減らすことができる可能性があります。

機能性胃腸症(FD)
 胃潰瘍や胃炎といったはっきりと目に見える病気がないのに胃もたれ、吐き気、胸やけ、嘔吐などの症状が少なくとも3ヵ月以上続く病気。「排便の状態や内容に関係しない」ことが条件です。
 除菌によって改善するという報告があります。

胃過形成性ポリープ
 持続的な炎症により胃粘膜の一部が増殖し、胃内腔に突出した病変で、良性隆起性疾患の代表的なものです。
 胃底腺ポリープは胃底腺の増殖したものでピロリ菌と関わりがありません。

B.ピロリ菌の除菌療法

 ピロリ菌を薬で退治することを除菌といいます。ピロリ菌の除菌により、関連する病気が改善したり予防できる場合があります。日本人のピロリ菌感染者の数は約3,500万人といわれています。多くのピロリ菌感染者は、自覚症状がないまま暮らしています。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌に関連する疾患の治療および予防のため、ピロリ菌感染者のすべてに除菌療法を受けることが強く勧められています。
保険適用で除菌療法の対象となる人は、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の患者さん、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の患者さん、胃MALTリンパ腫の患者さん、特発性血小板減少性紫斑病の患者さん、早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃の患者さんです。
 もしも、あなたが上記に該当しても、除菌療法が必要かどうかは主治医とよく相談してください。


■ 除菌療法の実際

 ピロリ菌の除菌療法を始めるまえに、まずは除菌療法の対象となる病気があるか確かめます。内視鏡検査または造影検査で胃潰瘍または十二指腸潰瘍と診断されたり、内視鏡検査で胃炎と診断されてから、検査でピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。

 ピロリ菌の検査には、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。ピロリ菌感染が気になる方は、除菌療法の対象となる病気なのかピロリ菌の検査や除菌療法が必要かどうか、病院でよく相談してください。

ア. 内視鏡を使う検査方法

@迅速ウレアーゼ試験
 ピロリ菌の持つ酵素の働きで作り出されるアンモニアの量を調べて、ピロリ菌がいるかどうかを調べます。内視鏡をしたその直後に判定できるメリットがあります。
A鏡検法
 採取した組織を染色して顕微鏡で観察することにより、ピロリ菌がいるかどうかを調べます。存在診断で擬陽性はないといってよい検査です。プレパラートが残るので見直すことができます。
B培養法
 採取した組織を用いて培養し、ピロリ菌が増えるかどうかを調べます。本菌は増殖速度が遅いために培養には3日から7日を要するため、この検査法をとると時間が掛かることが欠点です。

イ. 内視鏡を使わない検査方法

@抗体測定
 ヘリコバクター・ピロリが感染すると、本菌に対する抗体が患者の血液中に産生されます。ヘリコバクター・ピロリ感染の有無を検索するスクリーニング検査として現在最も一般的な方法ですが、5-10%くらい抗体を作らない人がいて、スクリーニングでは、誤差(偽陰性)があります。
 除菌判定に用いる場合、抗体価が前値の1/2以下に下がって入れば、まず除菌できているといってよい、もっとも信頼性の高い検査です。ただし、除菌後の抗体価低下には時間が掛かるため除菌後6か月以上待つ必要があり、判定に時間がかかるのが欠点です。
A尿素呼気試験
 尿素を含んだ検査薬を内服し、服用前後で呼気に含まれる、二酸化炭素の量を比較して、ピロリ菌がいるかどうかを調べます。除菌判定にもっとも多く用いられている検査ですが、やや手間のかかる検査です。また、ピロリ菌以外の腸内細菌の影響で、擬陽性(ピロリ菌がいないのにいると判定されること)になり、間違った二次除菌をしてしまう可能性もあります。
B便中抗原測定
 ヘリコバクター・ピロリに対する抗体を用いた抗原抗体反応による検査です。この抗体が、生きた菌だけでなく死菌なども抗原(H. pylori抗原)として認識し、特異的に反応することを利用し、糞便中H. pylori抗原の有無を判定します。

 ピロリ菌の検査は、これらのうち、いずれかを用いて行われますが、1つだけでなく複数の検査を行えば、より確かに判定できるとされています。

 ピロリ菌の除菌療法は、1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の合計3剤を服用します。1日2回、7日間服用する治療法です。正しく薬を服用すれば1回目の除菌療法の成功率は約75%〜約90%と報告されています。
 除菌療法が成功すれば、もとの病気は治っていくことが多いです。

 すべての治療が終了した後、4週間以上経過してから行うピロリ菌の検査(除菌できたかどうかの検査)は必ず受けてください。また、検査に抗体測定を用いる場合はすべての治療が終了した後、6ヵ月以上あけてください。

 一次除菌療法で除菌できなかった場合は、再び7日間かけて薬を飲む、2回目の除菌療法を行います。2種類の「抗菌薬」のうち1つを初回とは別の薬に変えて、再び除菌を行います(二次除菌療法)。
 一次除菌療法で除菌ができなかった場合でも、二次除菌療法をきちんと行えば、ほとんどの場合(95%〜98%)、除菌が成功すると報告されています。

 確実にピロリ菌を除菌するために、指示された薬は必ず服用することです。 自分の判断で薬を飲むの中止したり、薬を飲み忘れたりすると、除菌がうまくいかず、治療薬に耐性をもったピロリ菌があらわれることがあります。
 耐性は薬に対して細菌が抵抗性を示すようになり、その薬が効きにくくなることを言います。

(ピロリ菌除菌の流れ ;武田薬品の患者さん向けパンフレットより)

■ 除菌療法の副作用

頻度の多い副作用
◎下痢、軟便、水様便
◎味覚異常、舌炎、口内炎、口唇炎、舌がしびれる、口が乾く

注意すべき副作用
◎アレルギー反応(蕁麻疹、かゆみ、発疹など)
◎血便
◎発熱

その他の副作用
腹痛、腹部膨満感、便秘、肝機能異常、動悸、血圧上昇、吐き気、腸にガスがたまってお腹が張る、おならが出る、胸やけ、腸炎、食道炎、胃部不快感、食欲不振、痔核、頭痛、めまい、熱感、倦怠感、顔のむくみ

除菌療法中に副作用かな?と思ったら
★軟便、軽い下痢などの消化器症状や味覚異常が起きた場合
⇒自分の判断で、服用する量や回数を減らしたりせずに、最後まで(7日間)残りの薬の服用を続けてください。
 ただし、服用を続けているうちに下痢や味覚異常がひどくなった場合には、我慢せず、主治医または薬剤師に相談してください。
★発熱や腹痛を伴う下痢、下痢に血液が混ざっている場合、 または発疹が出たの場合
⇒直ちに薬を飲むことを中止し、主治医または薬剤師に連絡してください。

■ 成功のコツ

⇒以下の項目にあてはまる方は、事前に必ず主治医に申し出てください。
1. これまでに薬を飲んでアレルギー症状を起こしたことのある方。
2. ペニシリン等の抗菌薬を服用時に、ショック等の重篤なアレルギー症状を起こしたことのある方。
3. 抗菌薬や風邪薬で副作用を経験したことのある方。

⇒確実にピロリ菌を除菌するために、指示された薬は必ず服用してください。
(1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の3剤を同時に1日2回、   7日間服用してください)

⇒自分の判断で服用を中止すると、除菌に失敗して、治療薬に耐性をもったピロリ菌があらわれることがあります。

⇒除菌療法の間は、アルコールの摂取(飲酒)を避けてください。

⇒ピロリ菌の除菌療法が成功すると、ピロリ菌が関係している様々な病気のリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。
 除菌後もきちんと医師と相談の上、定期的な検査を続けましょう。



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